相続放棄と管理義務
1 相続放棄をしても、相続と無関係になれない?
相続放棄の最大のメリットは、亡くなった方の負の財産を受け継がなくてもよくなることです。
たとえば、亡くなった方が300万円の借金を背負っていた場合、相続放棄をすれば、借金の返済義務を相続しなくてもよくなります。
「借金を相続しなくてもいい」というイメージから、「相続放棄さえすれば、相続と一切無関係になれる」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、相続放棄をしても、必ずしも相続と無関係になれるわけではありません。
具体的には、遺産の管理義務が残る可能性があることがあります。
ここでは、相続放棄と遺産の管理義務について、ご説明します。
2 遺産の管理義務とは何か
⑴ 2023年4月の民法改正前の管理義務
たとえば、Aさんが亡くなり、Aさんの子が全員相続放棄した場合、相続権はAさんの両親に移ります。
仮にAさんの子が遺産を預かっている場合、次の相続権を持つAさんの両親に、遺産を引き渡さなければなりません。
遺産の引渡しをするまでは、次の相続権を持つ人のために、遺産を管理しなければなりません。
もし、相続人全員が相続放棄をした場合、最終的には国が遺産を引き取ることになります。
そのため、相続放棄をした相続人は、国が遺産を引き取るまでの間、遺産を管理しなければなりません。
このように、相続放棄をしても、遺産を管理する義務は残り続けることになります。
⑵ 民法改正前の管理義務における問題点
上述のように、改正前の民法では、相続放棄をしたとしても遺産を次の相続人(もしくは国)へ引き継ぐまでの間、遺産の管理義務を負うこととなっていました。
しかし、現金や預金口座などであれば、自分の財産と混同しないように分けて保管しておけばよいので難易度はさほど高くないですが、不動産については、管理をしなければならないことが相続人にとって大きな負担となる場合があります。
例えば、亡くなったAさんが北海道に家を所有して住んでいたが、相続人である子供は大阪に住んでいるという場合、大阪に住んでいながら北海道の家を適切に管理することは非常に大変です。
にもかかわらず、例えば家がかなり老朽化していて、瓦や外壁が崩れて近隣の住宅を破損してしまったり、通行人にケガをさせてしまった場合、損害賠償請求等を受けるリスクがありました。
⑶ 民法改正による管理義務の範囲の明確化
そこで、2023年4月に民法改正が行われ、相続放棄をした場合の遺産の管理義務を負う者の範囲が明確化され、「放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは…その財産を保存しなければならない」(民法940条1項)とされました。
上記の例でいえば、大阪に住んでいる子供は、Aさんが住んでいた北海道の家を「現に占有」していたとは言えないため、相続放棄をした場合その家の管理義務を負わないことになります。
3 遺産の管理義務を免れる方法
上記の例で、Aさんと同居していた子供がいた場合、その子供は北海道の家を「現に占有」していたと評価される可能性が高く、相続放棄をしても管理義務は免れられません。
もっとも、遺産の管理義務は、「次の順位の相続人が、管理をするまで」負うことになります。
そのため、次の順位の相続人に対し、財産の管理義務を託した場合、遺産の管理義務を免れることになります。
では、最後の順位の相続人には、相続放棄した後、管理義務を免れる方法はないのでしょうか。
相続放棄による遺産の管理義務を免れる最終手段は、相続財産清算人制度を利用することです。
相続財産清算人は、遺産を整理し、債務の返済をしたり、残った遺産を国に引き渡す役割を負う人です。
相続財産清算人の選任をできるのは家庭裁判所なので、家庭裁判所で手続きをすることになります。
参考リンク:裁判所・相続財産管理人の選任
お役立ち情報
(目次)
- 相続放棄が受理されないケース
- 相続放棄後にしてはいけないこと
- 相続放棄したかどうかについて確認する方法
- 相続放棄はいつまでできるか
- 相続放棄できないケース
- 相続放棄の申述書の書き方
- 相続放棄の理由の書き方
- 相続放棄の期限
- 自分で相続放棄ができるのか
- 被相続人の生前に相続放棄ができるか
- 相続放棄を取り消すことはできるか
- 相続放棄と管理義務
- 相続放棄をした場合に代襲相続は発生するか
- 相続放棄をした場合に死亡保険金はどう扱われるか
- 相続放棄での生命保険の扱い
- 相続放棄と未払の公共料金
- 相続放棄をすると土地はどうなるか
- 相続放棄をしたら墓はどうなるか
- 認知症の方の相続放棄
- 全員が相続放棄をしたら家はどうなるか
- 相続放棄と遺品整理
- 未成年の方の相続放棄
- マンションの相続放棄
- 財産不明状態での相続放棄
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